
LINEから開発者向けに提供されている「LIFF」ですが、LINEを活用したビジネス展開を行っていく上でメリットが数多く存在することから、リリース以来注目する企業がますます増えてきており、今後もニーズが高まると言われています。
この記事ではLIFFを使ってどんなことができるのか、具体的な活用例から実際の事例までご紹介していきます。今後さらに活用が広がるLIFFについてぜひこの機会に理解を深めていってください。
- LINE Front-end Framework(LIFF)とは
- 具体的な活用例
- モバイルオーダー、事前注文
- 予約
- 会員カード
- クーポン配布
- 接客フィードバック、アンケート
- LIFFを使った事例
- ロクシタン・デジタル会員証
- JINS
- アイカサ
- 福岡市
- 山三交通
LINE Front-end Framework(LIFF)とは

LIFFとは、LINE Front-end Frameworkの頭文字をとった略称であり、LINEが公式に提供するWebアプリケーションのプラットフォームです。
LINE上で動作するWebアプリを開発して展開し、LINEのユーザー情報と企業が保有する各種データをシームレスにつないだり、LINEアプリと連携した機能を扱うことができます。
LIFFの概要についてまだ知らないという方は、ミニアプリとの違いを踏まえてご紹介している記事があるのでこちらをご覧ください。
→ LINE LIFF のコピー①LIFFとは?ミニアプリとの違いを解説←リンクを挿入
具体的な活用例

それでは、LIFFならではの機能を活かし実際にどのような活用がなされているのか、主な例をみていきましょう。
モバイルオーダー、事前注文
飲食店などが、LINE上でユーザーからのモバイルオーダーを受ける仕組みを構築できます。事前に料理を選んだり、ドリンクのカスタマイズを行ったりして注文を完了させておくことはもちろん、LIFFによりLINE User IDの取得が可能で、LINE Payアカウントとの連携まで実現できるため、事前の決済まで完結させるワンストップのサービスを確立可能です。
料理の用意が出来た旨の通知を確認してから店舗に向かうようにすれば、ユーザーは待ち時間を最小限にでき、出来たての料理をすぐ提供してもらいその場で味わったり、テイクアウト商品をスムーズに受け取ったりすることができるでしょう。
サービスを提供する店舗などの側では、注文受付や決済などにかかる手間の削減や調理プロセスの最適化、運用効率化などを図れ、人件費や材料調達における無駄の削減、紙媒体のメニュー作成など諸コストのカットに加え、ユーザーの満足度向上による利用率向上、リピーター醸成や新規顧客の獲得など売上アップを見込みやすくなると考えられます。
予約
LIFFでもLINEで完結する予約の受付・管理にかかる仕組みを構築できます。飲食店のテーブル予約や貸しスペースなどのサービス予約、乗り物など移動手段にかかる予約、宿泊施設の予約、クリニックの受診予約など、さまざまな業態の予約システムに活かせます。
事前決済までワンストップの流れを構築したり、自動での問い合わせ対応、予約時間が近づいた際の通知配信、関連サービスのレコメンドや役立つ情報の提供を行ったりすることもできます。
多様に広がるシェアリングサービスの利用予約ができるフォームとして提供する場合、提供箇所を示すマップ表示などと合わせて実装されるケースも多くみられます。
会員カード
LIFFにより、LINE上でデジタルな会員カード、モバイル会員証を提供することができます。LIFFで取得したLINE User IDと、自社の顧客情報データベースにある会員情報を紐づければ実現でき、ポイントやスタンプを貯める仕組みとも連携させられます。
紙やプラスチック製のカードなど、実物の会員カードで運用する場合、ユーザーはわざわざそのカードを別に持参し、提示するといったことが必要ですが、LINE上で表示できるようにすれば常に持ち歩いているスマートフォンのみで会員サービスを受けられ、手間なくお得を享受できることから、会員となる意欲も増しやすく、利用満足度も上がりやすくなります。
提供側にとっても、実物カードに比べ、発行コストや管理の手間を削減でき、提示率が高まることで顧客の利用動向をよりリアルに反映したデータの獲得、利活用が可能になります。さらにLINEならではの身近さ、手軽さから、新規会員の獲得ハードルも低減しやすくなるなど、多くのメリットが見込めるようになっています。
クーポン配布
クーポンの配布も、LIFFによって効果的かつ手軽な管理で実施可能となるため、さまざまなかたちで応用利用されてきています。LIFFを通じて取得した情報と、データベースにある情報を連携させ、対象者を絞り込んで特別限定クーポンを配布したり、抽選クーポンの配布企画を実施したり、購入者が次回使用できる割引クーポンを取得できるようにするなど、販促施策に合わせて、身近なLINEだからこそチェックし、利用してもらいやすいクーポンの配布ができる仕組みです。
従来、紙媒体や対面接客、メールなどで行っていたクーポン配布を、LIFFアプリで行うことにより、非接触・非対面での配布が可能になるほか、LINEユーザー層とのデジタル接点を作り出し、身近な利用を促進させられる点、データ分析や顧客管理がデジタル化によりスムーズで効率的に行えるものとなって業務負担を軽減できる点、これまで以上にデータが有効活用できる点など、多くのメリットがあります。
これらのメリットから、個人店舗はもちろん、地域の商店街単位などで導入しているケースも見られるようになってきています。
接客フィードバック、アンケート
接客フィードバックや購入後のアフターサポート、購入者などに対するアンケートのフォームとして、LIFFを活用するケースも増えてきました。
公式アカウントの友だち追加を行ってくれたユーザーに、LIFFでアンケートフォームを提示、購入商品や購入時期を登録してもらったり、サービスや商品に関する意見を寄せてもらったりします。実施企業側は、LIFFで入力された情報と、ユーザーのLINE User IDが結び付けられた形でデータを入手できるため、顧客データベースと連携させるなどしながら、購入商品に関するサポート情報を提供したり、改善に向けた情報を配信したりすることができます。
購入者がよりその商品を有効に使っていけるよう、活用方法のアドバイスやレシピを届けるなど、個別に最適化したアフターサポートを充実させることで、きめこまやかな対応による企業好感度の向上やリピーター、ファンの醸成、商品・サービスの購入体験にかかる満足度向上を見込めるでしょう。
接客フィードバックでサービスの改善を図り、顧客の生の声を活かした展開を目指しやすくなる利点もあります。
LIFFを使った事例

最後に、LIFFを活用し、画期的なサービスの実現やビジネスの改革に成功した実際の事例をご紹介します。
ロクシタン・デジタル会員証
コスメティックブランド「L’OCCITANE(ロクシタン)」の日本展開を行うロクシタン・ジャポンは、LIFFを用い、LINE公式アカウント上でデジタルの会員証サービスを展開しています。
リアル店舗での商品販売が主体ですが、ECチャネルの展開も行っておりリアルとデジタルの両分野における顧客データを連携し、統合されたより高水準な顧客体験をオムニチャネルで提供していくことを目指していたそうです。
またロクシタンでは、かつてWebでの会員登録と、店舗での紙媒体の会員カードの発行・登録をそれぞれに実施していましたが、両方の登録情報を持つ顧客の連携が入力を促してもなかなか進まないこと、来店時にカードを持参することを忘れる顧客も少なくないことなどから、効果的な販売施策の実施と施策を通じて得られる見込み顧客のデータが紐づかないことといった点に課題も抱えていたといいます。
そこで、身近なインフラとなっているLINEのトークルームでサービスを展開できるLIFFに着目、LINE User IDと保有する顧客情報のデータベースを紐づけ、LINE上で提示できるモバイル会員証を提供するものとしました。
すると、顧客ユーザーが会員カードを持ち歩かずともポイントなどの特典を得られるようになり、利用が増えたほか、LINEでの展開という手軽さが受け、新規会員の登録件数もアップ、管理の手間やコストは削減でき、データの連携と有効活用も進んだそうです。
新規顧客では、約40%がこのモバイル会員証を利用、MAツールとの連携で会員個々に最適化したメッセージ配信を行うことも半自動的に実行可能になり、ユーザーに合った経路で、最適なコミュニケーションを深めていけるようになったと優れた効果が実感されています。
JINS
低価格高品質なメガネやブルーライトカットのPC用メガネなどで知られるアイウエアの「JINS」を展開するジンズも、LIFFを上手く活用しています。
もともとLINEを積極的に活用してきたJINSですが、公式アカウントで、LINEのトークルーム内で、JINSアカウントの登録や近隣店舗検索、待ち時間の確認、気になるメガネを探してAIによる「似合い度判定」まで受けられるようにするなど、多様なサービスを展開するものとしました。
さらにLIFFアプリで、LINEトークルームにおいて動くスロットを設置、キャンペーン期間中にはずれなしで限定の割引クーポンが当たるといった施策も行っています。これにより平常時の約7倍にあたる友だち登録数を得るなど大きな反響と効果を得ることができたそうです。こうしたLINE、LIFFでの施策により、定着率がアップ、店舗やECの売上向上にも確かにつながったことが確認されています。
アイカサ
急な雨でも濡れずに済む、傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開するNature Innovation Groupは、この「アイカサ」サービスを構築するにあたり、そもそもLINE起点で発想、LIFFによりトークルーム内で完結するWebサービスとしました。
まずLINE広告の友だち追加配信を通じ、公式アカウントの友だち獲得を進め、ユーザー登録を促進、見込み顧客を増やしていきました。貸し出し用の傘にはロックがかかっており、LIFFで表示されるリッチメニューから呼び出したQRコードリーダーで読み込みを行うと、ロック解除が実行されます。傘の設置箇所もアカウント内でのページから表示されるマップで確認でき、利用料金支払いもLINE Payでスムーズ。
サービスの提供・展開にかかるさまざまなコストを最小化しながら、ユーザーには傘という身近なもの、急に必要になる可能性があるものだからこそ、LINE完結で分かりやすい、手軽に使えるというメリットを最大化して提供するものとしました。
トークルームからの遷移なく、Webサービスを構築・展開できるLIFFの良さを活かすことで、新しいサービスでも実際に試しやすい、初期利用に至るまでの離脱率が低いサービスとして成功しています。
福岡市
自治体で積極的な利用を行っているケースでは、福岡市の粗大ゴミ受付が挙げられます。
従前はオンライン申し込みフォームで粗大ゴミ回収の希望受付を行っていましたが、あまり市民に利用は浸透せず、全体の8割が電話による申し込みであったそうです。そこでLINE公式アカウントを開設し、LIFFでトークルームに粗大ゴミ回収の申請フォームを表示させる仕組みを作りました。
希望者はフォームに情報を入力するだけでOK、入力した情報はメッセージにも連携可能とし、利用の流れはLINEのチャットでサポートする体制ともしています。トークルームの表示リッチメニューは動的な仕様で、粗大ゴミ回収にかかる申し込みメッセージの送信が完了すると、関連する不要なメニューは自動で非表示になるため、誰にとっても分かりやすく、間違いがない方式にもなりました。
運用開始後、わずか2週間で7,000人もの友だち登録があり、粗大ゴミ申請全体の約2割が、LINE経由となったそうです。結果として市職員の業務負担は軽減され、スムーズな回収が実現、市民にとっても利便性の高い自治体サービスとなりました。
山三交通
事例は顧客コミュニケーション型のサービスが多いものの、業務用システムとしても活用可能で、その優良事例としては、タクシー会社を運営する山三交通の例があります。
業務用システムで用いる場合には、セキュリティ面をしっかり充実させておかねばなりません。そこで社員としてアクセス権があることを、LINEのログイン認証で確認後、機能を使えるようにします。
山三交通では、社員がLIFF上で社員番号を登録すると、社内データベースとの連携により、LINEアカウント上での認証が行え、労務管理が実行できる仕組みを整えました。社員はLINE上で労働時間や有休消化日数をいつでも確認することができます。
以前は労務管理・勤怠管理を専用ソフトウェアの管理としていた同社ですが、ドライバーらが使いこなせないシーンも多く、電話や無線で本部に連絡して確認するといったことがしばしば発生していました。
しかし、このLIFFによるLINEをベースとした方式としてからは、従業員の4割を60歳以上が占めるにもかかわらず、ほとんどの社員がこのサービスを使いこなせており、高い利用率でデジタル移行による業務効率化を推進させることができたそうです。幅広い世代に馴染みがあり、少し慣れれば直感的に誰でも使える、LINEのトークルームで完結するシステムとしたからこそ、実現できた注目すべき例といえるでしょう。
インキュデータ株式会社

- コラム編集チーム
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